White atelier BY CONVERSE

登場人物のセリフはほとんどなく、淡々と情景が変わる作品を描く漫画家の横山裕一さん。
独特の世界観が生まれた背景、漫画で表現したいことについて聞きました。

ー喜怒哀楽もエンタメもない。
時間の流れを描きたい。

漫画を描き始めた理由は、率直にいうとファインアートの世界で挫折したからです。美大で油絵を学んだあと、いろんなコンクールに応募しましたが、20回以上落ち続けてしまった。だから僕は、現代美術はダメなんだと気付いて、漫画を描き始めたんです。それが意外にも受け入れられて、20年以上描き続けているというだけ。僕の作品は、いわゆる“売れている漫画”とは違って、エンターテインメント性はない。人間の喜怒哀楽もないし、感動するような場面もないんです。なぜ、そうなのかというと、絵画の続きを漫画でやりたいから。絵は一つの場面がその中で完結しているけど、僕はその先の“時間の流れ”を描きたい。たとえば、『トラベル』という作品は、僕が若い頃、東京から京都まで各駅停車の電車に乗って8時間くらいかけて移動した体験から生まれました。窓側の席に座って、移ろう景色をただ見つめるだけ。何もドラマティックな展開は起こらない。でも、これを漫画にするとどうなるんだろうって。そういう好奇心がすべての出発点。だから僕の作品は “景色漫画”なんです。

ーPCもスマホも贅沢品
なかったらなくていい。

コンバースのオールスターは高校生の頃、みんなが履いていました。僕は持ってなかったけど、生地が薄手でハイカットのタイプは他に見たことがなかったから、釣り用のウェーディングシューズにいいなと思った記憶がありますね。今回は、僕が過去に描いた作品の中から選んでコラボレーションしました。せっかく作ったけど、僕の家の周りは土だらけなので、履くとすぐに汚れるから観賞用になるかな(笑)。以前も、とある会社とスマートフォンケースを作りましたが、僕はスマートフォン持ってないから使えないんです(笑)。そう、スマホもパソコンも持ってない。今回のような仕事で必要なやりとりはガラケーで対応します。たまにメールが届かないこともあるし、重いデータは開けません。でも、僕はスマホもパソコンも贅沢品だと思っているので、なくていい。ちっとも不便じゃないですよ。相手は不便そうですけど(笑)。

ー美術の楽しみ方は、自分で
おもしろさを見つけること。

今一番やりたいことは、3年くらい前から書き続けている漫画を完成させることですね。僕の作品は、どこが面白いのかわかりづらいという人もいます。でも本来、美術ってそういうものだと思うんです。ひと昔前、美術館に展示されている絵は高い位置から鑑賞者を見下ろして、「理解できなければお前が悪い」と言っているような偉そうな態度があった。今、そういう作品や美術館は少ないですよね。鑑賞者に優しいというか、みんなが知っていることを表現して、くすぐっているだけという気がするんです。知らないものを見せたり、知らないけど実は知っていることに気づかせてくれたりする。美術の意味はそこにあると思うんです。僕はそれを漫画で表現したい。理解できないなら、読者や鑑賞者が面白さをみつけてこないといけない。疲れているときは慰めにも癒しにもならないかもしれないけど、心に余裕が出来た時、僕の漫画を開いてほしいですね。

Artist Profile

横山裕一 / Yuichi Yokoyama

1990年に武蔵野美術大学油絵科を卒業した後ファインアートの制作を行っていたが、2000年以降「時間を描く」ことができる漫画を表現方法として選ぶ。疾走感のある描線やオノマトペ、途切れることなく描かれる時の流れや独特なキャラクターが特徴となる横山の漫画は「ネオ漫画」と称され、『ニュー土木』、『トラベル』、『NIWA』、『ベビーブーム』、『世界地図の間(ま)』など多くの著書は日本、フランス、アメリカ、イタリア、スペイン、ロシアなどの国で翻訳、出版され人気を博している。その他、高濃度蛍光色をふんだんに使用し横山の鮮やかな色彩の原画を再現した『BABY BOOM FINAL』(Akio Nagasawa Publishingと共同制作)など、質の高い作品集も出版されている。

#07
Artist Interview Index
twitter
facebook